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酒と音楽が好きなゲイのブログ

人間仮免中

・最近読んだもの
窪美澄の『よるのふくらみ』を読んだ。『ふがいない僕は空を見た』で有名な著者。読んでいて心がきつくなるシーンが何回かあった。人と関わり合うこと、人を愛することというのを女性目線で淡々と伝えてくる。けれど、展開の流れが穏やかなので安心して読み進めることができたし、片手間でも十分内容が頭に入ってきた。
窪美澄は食事のシーンが多いので、今後もどこかでドラマ化や映画化してほしい。個人的に、食事を描くのがうまいと思う。文章に喉越しを感じる。

喉越しといえば、山階基の『湯舟泥舟』を読了。こちらは短歌。読むのに少し時間がかかった。というか読み終わるのが勿体無かった。言葉が目から入ってきて、脳内に風景を連想させるのが実に巧みだった。温度や色を言葉で伝えてくるけど、暴力ではなくそよ風のように優しくて暖かい。誰かに手を握られているようで、握られていない気分だった。
読み終わった後、しばらく動くことができなかった。おれは、記憶の中の夏の風景に閉じ込められた。

卯月妙子の『人間仮免中』柏のブックオフで100円で売っていたので購入。
今更ながら読んだけど、内容が中盤からかなりきつくてしんどかった。
心に病気がある人と向き合っていくことはすごく難しい。ボビーの卯月さんに対する絶対的な愛や安心感がじわじわと伝わってくる。何度もいろんな壁を乗り越えて、ボロボロになっても生きていれば幸せじゃん!っていう姿勢がとてつもなく尊く、美しかった。
人間仮免中 つづき』はメルカリで購入したので、そろそろ届く頃。

始発

どうして世の中の男はつまんない男が多いのか。仕事に情熱を持ってない奴が多いのか。最近そういったことばかり考えている。若いからまだ大丈夫だよ、いろんな人と会っていろんなことしたらいいよって、てめえおれより先に生まれて生きてるからって何おれの人生わかったみたいな口で言ってんじゃボケ。てめえの人生をおれの人生にかぶせるな、ふざけんな。

そうやって、いつだって強気になって、躍起になって空に向かって暴言を吐いてる。鼓舞することで自分を保ち、他人に対して優しくなれるなら、まだマシだと思う。
誰かから相談を受けたりして、自分の考えを話すのは簡単なように見えて難しい。魅了があるね、落ち着いてるね、若いのによく考えてるねとかなんとか言われる度に、この人今まで何を見て、何を感じて、それから何を考えて生きてきたのかなと思う。その場しのぎで会話するのは誰だってできるだろ。おれたちは言葉でしか相手のことを理解することをできない悲しい生き物だから。
言葉以外にはまぐわうことでしか相手を知る術を知らない。けれども、残念ながらまぐわうことは自傷行為に匹敵し、そこまでして相手を知るのは実に体力を使い、そして疲れて、癒しを求め、けれども癒しという感覚は肌を介することでしか理解できないと思っている人が大半であり、さらなる自傷行為につながる。
その人が使っているボディソープ、柔軟剤の香りは、常にプラットホームの向こう側へと歩を進める努力をしている。匂いや感覚は無意識の範疇ではあるが、人にとっては意識内に存在して、そしてそれは絶対的な力を持っている。だけど、みんなはそんなことを考えてもいないし、考えようともしない。1日は三食であることに疑問を持つ人はいるのか、もっと言えば食事をすることに疑問を持つ人はいるのか。
3食の食事はルールに似ていて、生まれた時に教わっている。食事をすることは本能であり、これも生まれた時から教え込まれている。
だから、誰1人として、疑問に思わない。それは、悲しみというものを疑うこと、悲しみというものを理解することをしないのと同義だ。

ここ数ヶ月、ずっと悲しみから逃れようとしていた。悲しみに対して何も思わないようにして過ごしてきた。‪振り返ったところに、すぐ悲しみがいるなんてのはわかっていた。‬
いつも悲しくならないために、振り返らないように前に進もうとしていた。いろんなことを頭に詰め込んで、周りを雑音で覆って、常に前しか見ないようにした。
言葉の配列や力が自分を傷つけるなんて、考えればわかることだった。
それでも、振り返った時の悲しみと向き合うよりは全然楽だった。
いつかの夜に間違ってブルーベリー味のタバコを買ったのも、それを全部しばけなくて捨てたのも、今はいい思い出だった。好いてくれる人を好きになることができないこと。その人となんとなく連絡を取り合わなくなったこと、それは全部選択肢と価値観の問題なのかもしれない。
おれがここに書いてあることは、悔しいけれど全てはララランドでも描かれていることだ。
けれど、ララランドをそこまで婉曲して見ている人なんてのは、この世には少ないのは確かなことで、それは不思議でもなくて、普通のことだった。
普通になれない自分が地上から3ミリほど浮いて過ごしているのは、普通になろうと努力をしている必死さが目に見えて醜い行為であった。
機会を伺っては、巣に戻り、涙を拭いては、稼ぐために満員電車に揺られるのはどう考えても普通の人と似ていた。心が焼け野原だということを除いて。


‪”おれたぶん、あなたが、思ってるような人じゃないと思うよ。おれたぶん、あなたのこと好きにならないと思うよ”‬


こういうことは誰かと出会うたびに感じることの一つだ。
少し前までは好きな人を見つけて、付き合って、一緒に住むことが最終形だと思っていた。けど、どうやらそうではないらしい。
好きな人と一緒にいることを求めるというより、同じように悲しみから逃れるための術を探している人と、単純にレジスタンスを組みたいだけなのかもしれない。

振り返らないように、逃げるようにして、今日も今日とてノイズの海に溺れていたい。

フェアリーテイル

4/23
前日の晩に思い立って、友達と2人で嵐山に行くことに。

春の嵐山は観光客が多くて、まっすぐ歩けなかった。人力車を押す、お兄さん達を品定めしながら竹林を歩き、祇王寺で苔を見た。どんなものでも金にしてしまう京都という街を感じた。いつものように古びた、ババアが1人でやってるような喫茶店で暖かい日を浴びながら、ミートソースのスパゲティを食べた。

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春といっても太陽が照っていると体が火照る。首筋に流れた汗を、春の風が優しく触れた。京都の山々を見渡すことができる寺で炭酸のジュースを飲んだ。

夜は河原町を散策した。
鴨川を歩きながら、今夜はブギーバックを口ずさんだ。
立ち飲み屋で食べたホワイトアスパラとトマトのサラダは美味しかった。

ここんところ、恋愛をする気が一切おきないし、仕事もつまらなかったから自然に触れたり、美味しいものを食べたりして落ち着いた。

ずっと胃が荒れてるような気がしてて、胃薬は欠かさず飲んでいた。薬に頼りすぎるのは禁物だが、酒に頼るのもよくないと思う。
酒を毎日煽るのは、寂しさや悲しさから逃げる為だった。酒をたらふく飲めば、いろんなことがどうでもよくなる。いろんなことを考えなくて済む。そうしていたら、何故だかいろんなことを忘れるようになった。記憶力が衰えている気がする。少し前のこと、やろうとしてたことが思い出せないことが多いから、デスクが付箋だらけになった。紙で埋もれた仕事場では、何をしたいのかも、何をしているのかもわからなくなった。とにかくどうでもよくて、誰にも会いたくなかったし、誰にも触られたくなかった。誰にも触られたくないくせに、なんだかんだで人と眠る。相手が満足すれば自分のことを諦めたり、飽きたりしてくれると思った。自分に自信はないけれど、それでも言い寄ってくる人はいる。その人のお腹を満たすには寝るのが手っ取り早いし、わかりやすい。
好きでもない人、恋人候補の人とベッドで眠るたびに、その人が使っている柔軟剤の匂いが香り、その人が部屋から出ていった後もその匂いはしばらくそこに居座っていた。その人がまだ部屋にいるみたいな気がして、気持ちが悪かった。

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4/25
会社で初めて発表をした。今年度の決意表明だった。終わった後で、東京の人間がおれの発表を酷評していたことを聞いた。頑張ったのにな、つらいな、とは思わず、年寄りは誰かをいじめていないと気が済まないのはどこに行っても同じなのだと知らされた。同時に誰かが自分を傷つけてくれることに安心したし、これからも傷つけてくださいと思う。どうせ、てめえら先に死ぬくせによ。

夜は課の飲み会だった。
2軒目で飲みすぎて、記憶を失くしてしまった。会社ではすぐ女の子とやっちゃう、音楽と酒が好きな暴れん坊というキャラクターで過ごしているから、このくらいが丁度いいのかもしれない。
帰宅したら、ベランダが何者かによって荒らされていた。茶色い液体で汚されたベランダが誰の手によってそうなったのかはわからなかった。酔って帰ったのに、怯えながら、眠りについた。
起きたら、プリンの生どら焼きの袋が落っこちていたので、どうやら泥酔して食べたらしいが、一切覚えていない。

 

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二時間だけのバカンス

気がついた時には社会人になって2回目の春がやって来ていた。
この季節は何を着ていいのか本当にわからない。寒くてあったかくて雨がたくさん降る。気まぐれでわがままで不器用で一生懸命だ。
一つ下の年の後輩が入ってくる。白いワイシャツと青いネクタイと型が崩れていないスーツが眩しい。おれだって白いワイシャツと青いネクタイを締めているけど、スーツはとっくにクタクタだ。

3月が終わると、いつのまにか仕事が増えて、責任もあることばかりで身の回りが埋まっていた。選考中の学生と直接話をした。2年目社員の〜と人事がおれのことを紹介する。おれが言葉を発するたびにメモを取る学生たちの目はどこかつまらなさそうでどこか不安げだった。

恋はいつのまにか終わりを迎えていた。
いつも勝手にやってきて、勝手に終わる。
人のせいにしているからうまくいかないんだよとダイニングバーの店長は言う。
その通りだと思う。いつも他人が悪いと言ってしまう。誰かのせいにするのは簡単だし、自分が悪くないと思うと気が楽になる。だけど、仕事はそうはいかない。いつも自分に返ってくる。だからこそなのか、恋愛くらいは誰かのせいにしたい。誰かのせいにして自分が悪くないと言うのはとても傲慢で、非力で、厄介で、迷惑で、最低だ。

黒い机に向かい、白衣を着ていたのがすでに2年前のことになる。
つい昨日のような出来事。おれは春が来るたびにそういうことを思い出す。今は大阪にいて、毎日朝が来るのを拒んでいる。いくつもの思い出がジェンガのように身を成して、崩れてしまうかしまわないかの瀬戸際でゆらゆらしている。いつだって、取りやすいパーツを取って生きていた。渋谷の海で泳ぐ魚なんていなかった。若くあることはアルコールやタバコとは無縁な気がした。

先週の金曜日に日本海を訪れた。海の匂いは生き物が死んだ匂い、生きていた証。加持リョウジがそんなことを言っていた。漁港で食べた焼き鯖寿司は美味しかったけど、なぜか悲しくなった。

土曜の夜に焼肉を食べて、酒を飲んだ時、友達の偉大さに気がついた。

桜を見るたびに宇多田ヒカルを口ずさむ。音楽が頭の中でこんがらがる。酒を飲むたびに誰かに抱きしめてもらいたくなる。

初天神で食べた海老マヨの串揚げは美味しかった。攻殻機動隊の映画を観に行きたい。

ゴールデンウィークに音楽を奏でる予定を入れる。格安航空のチケットをiPhoneで予約した。

誰かに愛されなくてもいい、目の前の仕事をする。住民税と所得税が引かれて、手元にはいくらも残らなかった。19万も持ってない淀屋橋

ベランダで吸うタバコと普通の会話を愛している。

 

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Mary Lou

3/24
接待だった。
得意先1人とおれと年配の上司の3人で飲んだ。
オーソドックスな居酒屋だったけど、それなりに食べ物が高価そうだった。春野菜の天ぷらは少し苦かったけど、日本酒にはよく合った。
おれの上司は2月に奥さんを亡くしている。なぜ、その話になったのかはわからないがその話になり、上司が言った『妻を亡くしてから、1人で夜のスーパーに行くようになった。サラリーマンのおっさんがみんな半額になった惣菜や弁当に食いついて、カゴに詰め、レジに並んでいた。今までこういう世界があることを知らなかったから、同じようにレジに並んだ時、ああ、自分も1人になってしまったんだ、この人たちと同じなんだと感じた。そうしたら、もうスーパーには行けなくなってしまった』と、ボソボソとしゃべった。
社内では毅然としている人が、ここまで弱っていることを知り、愛している人を失うということの重みを感じた。

帰りに2人だけでバーに行き、話をした時も『おれは本当は太陽やひまわりのような人と出会いたいし、青空が似合う人と付き合いたい。だけど、いつもどこか弱く、欠点がある人を好きになる。それは自分が優越感に浸りたいとかでは決してなくて。同情しているとかでもなくて。単純にそういう人が好きなんだと思う』と言っていた。
どんな人も誰かを好きになるってことはどうしようもないこと。それは同じこと。それは何歳になっても。たぶん同じこと。

3/25
恋に落ちたと思ったが、どうやらなにも始まらないで終わりを迎えたみたいだった。既読がついたままのLINEの画面を見ながらぼーっとしていた。
この日、おれは別の男と会った。おれの悪いところはすぐに悲しい話をしてしまうこと。自分の欠点を話してしまうこと。嫌われたいわけでは決してないけれど、自分が誰かに受け入れてもらえるかどうかを試すようなことをする。本気で好きになった後で、おれのことを知った後で、取り返しのつかないことになるのが単純にめんどうくさい。惰性で生きているんだと思うし、恋人同士という関係にあぐらをかいてしまいがちだ。
彼が『誰だって悲しい時はあるし、暗い漫画くらい読むでしょ』という発言や『みんなダメなところはあるし、その方が人間っぽい』というような発言は少なからずおれを助けてくれたし、励みになったし、元気が出た。相変わらずわかりやすくてバカで不器用なおれが恋に落ちそうな瞬間が目の前で起きる。好きかどうかはわからなくて、だけど相手のことを知りたくて、自分のことを知ってもらいたくて。必死になる。たぶん、今から本気になる。自分のことを好きになってくれない、好きになるヨユウがない人を追いかけるより、自分のことを好きになってくれる人と向き合った方がシアワセになれるのかもしれない。あなたのこことこことここが好きですって言ってくれる人。出会いは20点でも、そこから100点に近づけるよう向き合っていけたらいいなと思える人。

 

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世界が終わる夜に

元彼がまだ無職だったことに驚いた。
2月中にはさすがに何かしらの仕事には就いているだろうと思っていたが、予想以上にダメな人だった。
どこから金が出ているのかは不明であるが、SNSを見る限り遊んでばかりいるようなので、彼の将来が単純に心配です。

会社では清純派を装いながらも”オネエ”や”大久保佳代子”というあだ名をつけられ、ビシバシ怒られながら机に座ってる。
時折、同期とウォーターサーバーの前でおしゃべりをするのが唯一の救い。
タバコは吸わないキャラで通しているので、昼休みにわざわざ外に出ては誰もこないキツエンジョでひっそり煙をしばいた。
毎日同じ場所に通い、好きなところへ行けなくても、三連休はやってきた。
普通のリーマンでよかったと思える数少ないメリット。
金曜の夜にスパークリングワインを飲みながら、ラタトゥイユを食べた。
土曜の夜はハイボールを飲みながら肉を焼いた。
日曜の夜に話題のララランドを見たあと、喫茶店で洋食プレートを食った。メンチカツは油を吸いすぎていて、食うのがキツかった。
月曜は会社の同期が来たので、腕をふるって唐揚げとポテトサラダを作った。美味しいね、楽しいねと言いながらご飯を食べ、ワインを啜った。酔っ払いながら、おれの家の小さなベランダで男2人が肩を並べてタバコを吸った。
春の日差しに包まれながら、会社の愚痴を言いながらだべった。この時の感覚は高校生の時の昼休みの過ごし方にちょっとだけ似ていた。おれたちは23歳になっていた。
1人でワインを開けたあと、一緒にギターを弾いたりした。共通の趣味がないから、お互いの好きなことをして過ごした。
夜になって、2人で小さいベッドに横になった。合宿みたいで楽しくね?って笑いあった。一緒にいて、心から笑える人が本当の友達だと思った。

火曜日は雨が降っていた。一日中二日酔いで、仕事という仕事ができなかった。人事課長から電話がかかって来て、なんかよくわからないことをたくさん言われた。200km以上離れた遠い東の国から声が届くというのは不思議なことだと感じた。
三連休でお金を使いすぎたため、夜はおとなしく家に帰って、鮭を焼いて食べた。風呂に浸かったあと、ベランダでタバコを吸っていたら、星がとても綺麗だった。昼間降った雨で、汚いものが全部流れてしまったんだと思った。

翌日、マンションの住人同士が騒音で揉めたらしく、”生活音に注意”、”他人を泊めることは原則禁止”などが書かれた張り紙が、マンションに何枚か貼られていた。体育学部の寮かよ。
玄関を開けると、扉の間に注意喚起の手紙が挟まれていた。
おれが寝ている間に誰かがここまできて、手紙を挟んだのだと思うと急に怖くなった。どちらにせよ、しばらくは誰も家に泊められそうもなかった。

気がつかない間に恋が終わりそうな気がした。『うまくはいかないと思うけど、応援してる』って言われた言葉をずっと考えている。そうやって、他人がみんな受け流すべき言葉をいつまでも大事にして考えるから、めんどくさい奴だと揶揄される。おれがモテないのは、ブスだからでも服装がダサいからでもなく、めんどくさいから。それに尽きる。
何も始まっていないまま終わらせるのは腹が立つけど、なんかもう疲れた。おれには好きなものが多すぎる。好きなものだけで周りを埋めて、お腹いっぱいにしたい。そんなところに好きな人なんかが入ってきたら、何かのバランスが崩れて壊れると思う。好きだけならいいけど、好きだけでは絶対に続かないのを知っているし、好きでい続けるには努力が必要なのも知っている。一緒にいる時間が長ければ長いほど、情が湧く。情が湧いたら、一緒にいるのが当たり前になるかもしれないけど、情が湧くのと好きなのは別だ。長く付き合った末に別れられないカップルは情にしがみついているだけだと思う。お互いがちゃんとわかり合うことをしないと、心に触れる努力をしないと。サボったらダメだと思う。

悲しみから解放されたとばかり思っていたけど、どうやらそんなことはなかった。1人で過ごす夜はいつまで経っても慣れることなんてなかった。

髪をうんと伸ばしたい。
目の前が見えなくなるくらいに。
そうしたら、悲しいものを見なくて済むから。春が来ても、心には冷たい風が吹いていた。

 

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恋愛模様

飲み終わって、終電を逃して歩いて帰って日、公園に小さい赤い花が咲いていて、春の匂いがした。
夜はまだ寒くて、冬だった。
冬の中に、春がいた。

3月に入ってから、決算月ということもあり社内に提出する書類が増えて来た。提出すべき書類を遅れて提出した。毎日ちゃんとやっている自覚は一切なく、むしろだらけて時間が過ぎるのを待っているから、諸々でボロが出たんだと思う。両手いっぱいに収まらない量の水を注がれ、溢れてしまっていた。課長からはこっぴどく叱られた。こんな会社辞めてやるって何度も思ったけど、直近ではそれが一番。

ちょっとだけあったかかった日。
採用中の学生と酒を飲んだ。
キラキラしていて、働くことに期待を抱いている目をしていた。自分もそうだったんだと思う。働いてみて思うのは、思った以上に働きたくない、やりたくないということだった。
じゃあ、何がやりたいの?って聞かれたら口を噤む。多分、本当にやりたいのは音楽だけ。今、この会社で働いているのは社会を経験してみたいと思ったからで。やりたいことをしようと思ったわけじゃない。やりたいとやらなきゃは違うなんて、みんなとっくの昔から知っているし、嫌な人はどこにでもいる。嫌な仕事はどこにでもある。そんなことばっかりを考えていたら、1週間で2万円くらい酒に使っていた。仕事もそこそこつらいけど、一番つらいのは人を好きになるということだった。おれはすぐに火が付いて、すぐに燃える。
好きってなったら、それ以外手につかない。この人と動物園行きたい、この人とお弁当もって公園行きたい、朝起きた時にそばにいてほしい、一緒に料理したりしたい、そんなことをずっと考えている。手に入った時の幸福を考えるのは自由だし、みんなその資格はある。だったら、楽しい方向に考えた方がいいに決まってる。例え叶わなかったとしても。そうして、おれが恋に没頭している間に、受けようと思っていたweb雑誌の編集のバイトの応募締め切りは過ぎてしまっていた。

 

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